水素社会の実現に向けて、燃料電池車の開発と普及の動向

水素は、再生可能エネルギーから製造でき、利用時には二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーである。水素を燃料として利用する燃料電池車(FCEV)は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、重要な役割を担うと期待されている。しかし、FCEVの普及には、まだ多くの課題がある。

水素社会のビジョンとFCEVの役割

photo by Shelby Asistio

水素社会とは、水素を主要なエネルギー源として利用する社会のことだ。

水素は、石油や石炭などの化石燃料に比べ環境に優しく、安全かつ高効率なエネルギーだ。

水素は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーから生成することができる。また、輸送や貯蔵が容易で、さまざまな用途に応用することができる。水素社会の実現は、地球温暖化の防止やエネルギー安全保障の確保に貢献すると期待されている。

水素社会の実現に向けて、FCEVの開発と普及が重要な役割を担うと考える。

FCEV

FCEVとは、水素と空気中の酸素を化学反応させて発電する燃料電池を動力源とする車のことだ。ガソリン車やディーゼル車に比べて、二酸化炭素や有害物質の排出が少なく、静かで快適な走行性能を持つ。

水素ステーションで給油することで、長距離の走行や急速な充電が可能だ。FCEVは、水素社会のシンボルとして、低炭素社会の実現に貢献すると考えられる。

FCEVの技術的な特徴と課題

燃料電池とは、水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を生成する装置のことだ。

燃料電池は、バッテリーと違って理論上、水素があれば電気を作り続けることができる。燃料電池の反応で発生する副産物は、水だけだ。そのため、環境にやさしいエネルギー変換装置と言える。

燃料電池から得られた電気をモーターに送り、車を走らせる。モーターは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンに比べて、高い効率とトルクを持つ特性があり、高い走行性能と低い燃費を実現できる。

FCEVの技術的な課題として、最も大きなものはコストの低減だ。コストを下げるためには、燃料電池の性能向上や耐久性向上、材料の安価化や製造の効率化などが必要だ。

特に、燃料電池に使用される白金などの貴金属の量を減らすことが重要だ。白金は、燃料電池の触媒として使用されるが高価であり、供給が不安定だ。白金の代替材料の開発や白金の使用量の削減が、燃料電池のコスト低減につながる。

FCEVの普及に向けた政策と支援策

FCEVの普及に向けて、政府や地方自治体、企業などがさまざまな政策や支援策を実施している。水水素の供給インフラの整備やコストの低減、消費者の理解と信頼の獲得などが必要不可欠だ。

そのため、FCEVの開発と普及に関する総合的な戦略や目標を策定し、水素ステーションの建設や補助金の交付、普及促進のための啓発活動などを行っている。

FCEVの普及に向けた政策と支援策の一例として、以下のものが挙げられる。

水素社会ビジョンの策定と水素基本戦略の改定

2017年に、資源エネルギー庁が水素社会の実現に向けたビジョンと目標を示した「水素社会ビジョン」を策定した。このビジョンでは、FCEVの普及目標として、2030年に80万台、2050年には約2,000万台を目指すことを掲げている。

このビジョンは、2017年4月に開催された「第1回再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」において、安倍首相から、世界に先駆けて「水素社会」を実現するべく、政府が一体となって取り組むための基本戦略を年内に策定するようにという指示があったからだ。

2019年には経済産業省が水素社会の実現に向けた具体的な行動計画として「水素基本戦略」を策定した。この戦略では、FCEVの普及に向けて、水素の供給コストの削減や水素ステーションの整備、FCEVの購入や運用の支援などを推進することを決めた。

水素ステーションの整備と補助金の交付

FCEVの普及には、水素ステーションの整備が不可欠だ。水素ステーションとは、FCEVに水素を給油する施設のことだ。

整備には、高いコストや規制などの課題がある。そのため、政府や地方自治体は、水素ステーションの建設や運営に対して、補助金や税制優遇などの支援策を実施している。

2020年3月末時点で、日本国内には約140箇所の水素ステーションがある。政府は、2030年には約900箇所の水素ステーションを整備することを目指している。

FCEVの普及促進のための啓発活動

FCEVの普及には、消費者の理解と信頼の獲得が重要だ。FCEVに対する誤解や不安を解消し、魅力や利点を伝えるために、政府や地方自治体、企業などは、さまざまな啓発活動を行っている。

  • 啓発活動の一例として、以下のものが挙げられる。
    • FCEVの試乗会や展示会の開催
    • FCEVの導入事例や体験談の紹介
    • FCEVに関する情報や知識の提供
    • FCEVに関するイベントやキャンペーンの実施

まとめ

FCEVは、ゼロエミッションのクリーンな自動車であり、長距離走行や大型化にも対応できるメリットがある。しかし、水素のコストやインフラの整備、FCEV自体の性能や信頼性の向上など、まだ多くの課題が残っている。

これらの課題を解決するためには、国際的な協力や技術革新、コスト低減などの取り組みが必要である。FCE

カーボンニュートラルの実現に向けて、重要な役割を担うと期待されている。今後もFCEVの技術開発や普及促進に注目していきたい。

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