日産自動車は2024年3月25日、新たな中長期経営ビジョン「The Arc計画」を発表しました。この計画により、新型モデルを含め30車種がフルモデルチェンジをする予想です。本計画は、電動化・技術革新・収益性向上を軸に、2030年までの競争力強化を目指します。特に、EV（電気自動車）とe-POWERモデルの拡充、新型車の投入、主要市場別戦略が注目ポイントです。
The Arc計画とは？日産の新たな経営ビジョン
The Arc計画の概要と目的
The Arc計画は、2024年3月25日に日産が発表した新しい中長期経営ビジョンです。この計画の主な目的は、2030年までの自動車業界の急速な変化に対応し、グローバル市場での競争力を強化することにあります。
「技術の革新」と「電動化」をテーマに掲げ、日本国内外での強固な基盤作りを目指しています。また、国内市場において80％のラインナップをフルモデルチェンジし、2026年までに5車種の新型車を投入するという挑戦的な取り組みを実行しています。
2030年を見据えた中長期的アプローチ
2030年を見据えた中長期的な戦略であり、技術革新やEV化を推進することで持続可能な未来を築くことを目標にしています。特に電動化の加速に注力しており、2026年度には電動車のモデルミックスを70％に拡大しようとしています。
収益性の向上と販売台数拡大の狙い
日産の収益基盤を大幅に強化し、年間販売台数を2026年度までに60万台に増加させることを目標としています。2023年の国内販売台数が51万台だったことを踏まえると、約9万台の増加を目指しています。
これを実現するためには、リーフ、キックス、エルグランドといった主要車種のフルモデルチェンジや新型車の投入が鍵となります。これに加え、高収益モデルであるBEVとe-POWERモデルの拡大も収益性向上の重要な柱となります。
技術革新とEV戦略の位置づけ
技術革新は、この計画において非常に重要な位置を占めています。特に、次世代e-POWERやプロパイロットといった新しいテクノロジーの開発・導入です。
その中でも、電動車の技術開発は計画の中心的な要素であり、新型リーフやe-POWERシステムを採用した新型エルグランドなどが投入される予定です。これにより、環境負荷の軽減とともに高性能な走行体験を提供し、日産ブランドの信頼向上を図っています。
主要市場別のターゲットと影響
主要市場ごとの異なるニーズに対応することで、グローバル展開も強化します。日本市場では乗用車ラインナップの再構築や新型車投入、中国市場では新エネルギー車（NEV）の拡大、北米市場ではEV普及の鍵となるモデルの投入に注力すると考えられます。
2026年までに30車種投入、その戦略と期待
新型車30車種の詳細なラインナップ
2026年までに30車種の新型車を投入する計画を掲げています。このラインナップには、大型ミニバン、コンパクトSUV、セダン、電動車両（BEV）など多様なカテゴリが含まれるでしょう。
主力セグメントである軽自動車や電動モデルの刷新・拡充が進められており、「ノート」や「セレナ」といった人気車種のフルモデルチェンジも期待されています。また、新型リーフや新たなクロスオーバーSUVなど、未来志向の電動車もラインナップ強化の中心となると考えられます。
注目モデル：スカイライン、エルグランド、サクラ
注目を集めるのが「新型スカイライン」、「新型エルグランド」、そして軽自動車の「サクラ」です。長寿モデルとして根強い人気を誇る「スカイライン」は、電動化を意識した次世代型として進化が期待されています。
「エルグランド」は2026年にフルモデルチェンジを予定しており、第3世代e-POWERシステムを搭載することで燃費性能が大幅に向上する見込みです。
「サクラ」はコンパクトな軽BEVとして大きな支持を集めており、さらなる進化によって日本市場での電動車普及を後押しする重要な役割を担うと考えられます。
BEVとe-POWERの採用拡大
電動化が進む中、新型車の多くにBEVやe-POWERを採用すると考えられます。2026年までに投入される30車種中、16車種は電動車両とする計画で、電動車のモデルミックスを70％に引き上げる目標を掲げています。
e-POWERは特に燃費性能と低排出が特徴であり、日産独自の技術として市場での競争力を強化する武器となります。また、BEVモデルも先進技術を取り入れることで、より多くの顧客層を取り込むことを目指しています。
競争力強化のための新型プラットフォーム
競争力をさらに高めるために、新型プラットフォームの採用が進められています。このプラットフォームは、車両の軽量化や剛性向上を可能にし、電動車両に最適化された設計が施されるとみられています。
また、製造コストの削減や生産効率の向上も期待されており、新型車のラインナップ強化を後押しする重要な要素となるでしょう。
投入スケジュールと市場インパクト
30車種の新型車投入は、2026年前後で段階的な計画で進められる見込みです。2025年には「キックス」や「マーチ」、2026年には「エルグランド」のフルモデルチェンジが予想されています。
これらのスケジュールは市場に大きなインパクトを与えるとともに、競合メーカーとの差別化を図るうえでの重要なタイミングとなります。また、日本市場のみならず、中国やアメリカなど、主要市場ごとのニーズに応じたモデル展開が行われるため、日産の競争力がさらに高まることが期待できます。
日産の技術革新：新世代e-POWERとプロパイロットの進化
新世代e-POWERの性能とメリット
新世代e-POWERは、従来の技術を大幅に進化させたハイブリッドシステムです。エンジンによる発電効率の向上、モーター性能の強化、および搭載バッテリーの最適化によって、これまで以上に静かでスムーズな走行を可能にするでしょう。
プロパイロット3.0の導入と自動運転の未来
プロパイロット3.0は、日産が誇る先進運転支援システム（ADAS）の最新バージョンです。この技術は、高速道路の単一車線での運転支援だけでなく、多車線での車線変更や合流の補助も可能にする進化を遂げています。
加えて、高精度な地図データや人工知能技術を活用し、安全性と利便性を飛躍的に向上させています。日産は、2030年までにこの技術を搭載した車種を倍増させる計画を発表しており、自動運転のさらなる普及に貢献する見込みです。
The Arc計画成功への課題と今後の展望
現状の課題と市場の反応
「The Arc計画」には多くの期待が寄せられる一方で、現状いくつかの課題も浮き彫りになっています。2024年度上期決算では、営業利益と純利益が前年同期比で大幅に減少しました。
また、日本国内では2026年度までに販売台数を60万台へと拡大する目標を掲げていますが、2023年度の販売実績は約51万台に留まっており、目標達成にはさらに9万台の販売増加が必要です。このため、計画されたフルモデルチェンジや新型車の投入が鍵となります。
The Arc計画が自動車業界に及ぼす影響
「The Arc計画」は日産だけでなく、自動車業界全体にとっても重要なメッセージを発信しています。この計画の成功が示すのは、電動化と収益性を両立できる戦略モデルの構築です。
他メーカーにとっても、日産の取り組みは一つのベンチマークとなり、同様の計画を検討する動機となるでしょう。また、電動車市場の競争が活性化することで、消費者の選択肢が広がるというメリットも期待されます。
今後、フルモデルチェンジされた新型エルグランドやリーフの市場での反応が、日産および業界全体の未来を大きく左右する可能性があります。
